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動画の“裏ワザ掃除術”、ちょっと待って!

  • 年末に向けて掃除系の動画やSNS投稿を見る機会が増えてきました。
  • 「この洗剤とこの洗剤を混ぜると最強に落ちます!」
  • 「家にあるものでプロ級の仕上がり!」
  • そんな言葉を見ると、つい試してみたくなりますよね。
でも実は、洗剤の“自己流ブレンド”はかなり危険なケースがあるんです。今回は、実際にお客様のお宅であった事例をもとに、「なぜ混ぜると危ないのか?」をお話しします。

実際にあったトラブル:サッシは綺麗、でも木枠がボロボロに…

あるお客様から、こんなお話をうかがいました。 「窓ガラスやサッシが汚くて、動画で見た“掃除ワザ”を試してみたんです。中性洗剤と塩素系洗剤(ハイター)を混ぜてスプレーして、サッシに吹きかけたら、すごくキレイになって…!」 ところが、実際に見せてもらうと、アルミのサッシ自体は確かにピカピカになっているものの、その手前にある木製の窓枠が変色し、ガサガサにささくれてしまっていたんです。 動画では「よく落ちる」「ピカピカになる」というメリットだけが強調されていましたが、数日後・数週間後にどうなるかまでは誰も教えてくれません。

どうしてそんなことが起きるのか?

ポイントになるのは、「中性洗剤」と「塩素系洗剤」を一緒に使ったことです。中性洗剤には界面活性剤が入っています。これは、もともと反発し合う“水と油”の境界線をなくして、汚れを水になじませて洗い流しやすくするための成分です。 この「境界線をなくす力」があるために、水と一緒に洗剤成分も、木材の中にどんどん染み込んでいきます。そこに塩素系洗剤の漂白成分などが重なるとどうなるか。
  • 木材にとっては、
  • ・水
  • ・汚れ
  • ・強い洗剤成分
  • が一気に内部まで入り込んでしまうことになります。
結果として、木の繊維が傷み、表面がカサカサに毛羽立ち、ささくれだってしまう。紫外線で傷みやすい窓まわりでは、なおさらダメージが大きくなります。 見た目も悪くなるうえに、ひどいと「触るとトゲのように刺さる」状態になることもあります。

プロはなぜ“混ぜない”のか

プロの現場では、強い洗剤を使うこともありますが、むやみに混ぜることは絶対にしません。例えば、お寺の無垢の木の柱や梁などについた“アク”を抜く作業では、
  • 1つ目の洗剤で汚れを浮かせて拭き取る
  • →しっかり乾かす
  • →別の洗剤で漂白をする
  • といったように、「順番」と「乾燥」を必ず挟みます。
もしここで違う洗剤を同時に混ぜて使うと、木が一気にボロボロになってしまうことを、現場の職人は知っているからです。 洗剤は「何に効くか」だけでなく、“どう組み合わせるか/組み合わせてはいけないか”まで含めて化学なんです。

「混ぜるな危険」だけじゃない、“見えないリスク”

塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜると「塩素ガス」が発生する──これは多くの方がご存じのとおり、「混ぜるな危険」と明記されています。 ただ、問題はそれだけではありません。メーカーは「単体で使う」前提で設計しています。 異なる洗剤を混ぜたとき、素材にどんな影響が出るかは保証されていないんですよね。多くの動画やSNSでは「そのもののビフォーアフター」しか映さず、たしかに“よく落ちる最強ブレンド”であっても、周囲の木部が傷んだり、素材が変色したりするリスクまでは語られていないことがほとんどです。  

家庭でできる安全な洗剤の使い方の基本

大事なのは、とてもシンプルです。「混ぜてOK」と書かれていないものは、混ぜないのが大前提です。メーカーが用途別に洗剤を分けているのは、「その汚れに対して一番安全で効率よく働くように設計しているから」です。 “この汚れにはこれ1本”これが、家庭でできるいちばん安全で、いちばん確実な使い方です。  

掃除は“力技”ではなく“化学”です

SNSや動画に出てくる掃除ワザは、見ていて気持ちがいいですし、「自分でもやってみたい!」という気持ちになるのは自然なことだと思います。 ただし、洗剤の勝手なブレンドは「効きそう」に見えて、その裏に大きなリスクを抱えていることも多いということを、ぜひ覚えておいてください。
  • 「これとこれ混ぜたら最強です!」という情報ほど、
  • ・どんな素材に使っているのか
  • ・数日後どうなっているか
  • ・メリットだけでなくデメリットも説明しているか
  • 一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。
どうしても落ちない汚れや、使う洗剤に不安がある場合は、自己流でブレンドする前に、プロに相談するほうが結果的に安心でおトクなことも多いですよ。  
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